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【感想】試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。【恋っていいですよ】

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「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」尾形真理子


ざっくり評価

読んでよかったか(主観)

よかった

本当によかったとしか思えない。

 

ボリューム(多い・ふつう・少ない)

ふつう~少ない くらい。

短編集なので一話一話完結型。

ドロドロした陰鬱さがほぼないので非常に読みやすい。

それに後味も良い。

内容の難しさ(むずかしい・ふつう・やさしい)

やさしい。

読み終わったあと、自分が10代の娘を持っていたら読ませたいと思ったくらい。

大人の恋愛ではあるけど、変に重要な駆け引きはないし、頭をつかう箇所もない。

あと単純に難しい字がない!

筆者紹介(簡単に)

尾形真理子(おがた まりこ)

1978年東京都生まれ。2001年博報堂に入社し、コピーライター、制作ディレクターとして活躍。(本の帯より引用)

コピーライター!

どうりで作中の名言が多いハズ。どれだけ私のハートに刺さったか、、、

インタビュー記事があったのでこちらも参考に。

ACC会報_あの人が、今_尾形真理子

あらすじ

奥まったこの場所に、洋服屋があると気づく人は少ないかもしれない。

渋谷駅から代々木公園のほうへ歩いて十分。原宿から歩いても同じくらいの距離。

渋谷区神南に、「Closet」というセレクトショップはある。

という本当に一番最初のプロローグの書き出し。

午前十一時。

背の高い店員は、ガラス扉にしゃがんで鍵をまわす。

「Closet」は、女の子たちを迎える準備を終えた。

舞台は「Closet(クローゼット)」という素敵な店員さんが一人で営むセレクトショップ。そこへ色々な背景をもった女の子たちが服を選びに来るのです。

そして服を試着して、思うのです、彼を。

店を出る頃には、もはや別人。

出せなかった一歩を踏み出した女になっていくのです。

印象に残ったエピソード

まず5つの短編があります

  • あなたといたい、とひとりで平気、をいったりきたり。
  • 悪い女ほど、清楚な服がよく似合う。
  • 可愛くなりたいって思うのは、ひとりぼっちじゃないってこと。←激オススメ
  • ドレスコードは、花嫁未満の、わき役以上で。
  • 好きは、片思い。似合うは、両思い。

 

一番はじめのエピソード、赤ちゃんたらこのネイリストのお話で既に心は掴まれてます。ちなみにこの本で1番インパクトがあったのは赤ちゃんたらこという言葉でした。脳内「た~らこ~♪」再生待ったなし。そりゃこの話の主人公もコンプレックスになるわ。

赤ちゃんたらこの主人公は、高校生から付き合って10年になる彼氏との関係について悩みについて。28歳じゃあ色々考えちゃいますよね…わかる…(あなたといたい、とひとりで平気、をいったりきたり。)。

 

「悪い女ほど、清楚な服がよく似合う。」というエピソードでは、不倫関係を続けることに悩む、女子力修行僧の美女クミちゃんのお話。

彼と同じ小説を読むのが好きらしい。んで、トリックを推理し合う。

「あの車掌と切符が、カギを握ってると思うな。クミの推理もおもしろいけど。」

ぜんぜん本編関係ないけど、ついこないだ読んだ「マジックミラー/有栖川有栖」思い出しちまったい。あれも新幹線を駆使した圧巻のトリックでした。思わずおぉ!と思ったけど、ここでは海外小説だったので違うと思います。残念…。


自分に厳しいクミちゃんのお話は、肩の力を抜いていい、というメッセージが込められてて読んでいてほっとしました。

 

あと、間違いなく名作は「可愛くなりたいって思うのは、ひとりぼっちじゃないってこと。」

これが一番共感できました。もう全世界の片想い経験者に読んでもらいたい。というか、両想いしかしたことないという猛者女子はこのエピソード読むと片想いをしたくなる(と勝手に思ってます)

 

あらすじをいうと、

新聞社で契約社員をしているアラサー、というよりアラフォーに近いオトナ女子チヒロが主人公。穏やかなオジサマたちに囲まれて不満のない会社生活を送っていたが、そこに美濃田くんという社会人4年目高身長高収入高学歴が配属される。

美濃田くんに仕事を教えたり一緒にランニングしたりするうちに、好きだって気持ちに気づくんだけど、美濃田くんが急に異動になる…という物語。

9つ年下に恋をしたことに悩むチヒロ。さらに離れ離れになることで心は一層揺れ動く。

美濃田くんから食事(最後の晩餐)に誘われ、そのときの服を「Closet」で選びに行く。

美濃田くんがいたから、わたしはキレイになりたいって思えた。おしゃれする楽しさも、恋する気持ちも、思い出した。美濃田くんが自分を見る目が、惚れた女を見るそれではないことも、チヒロはとっくに気づいていたけれど。

毎度思うのが、本当にチヒロが中学生みたいに恋をして文中には「美濃田くん」という単語がとても多いです。10代で恋をしたときって頭の中が好きな人のことだらけになりますよね。そのときの気持ちを私も思い出しますよ…(涙目)。

あと、チヒロが相当ひどい手口で婚約破棄されている過去を今更思い出しましたが、それを加味すると間違いなく幸せになっていることが伝わります。

そして終盤。

美濃田くんが最高に素敵だと思ったことを、伝えてあげたい。わたしからも。

職場のおじさま連中にも、わたしにも、とびきりやさしい美濃田くんは、どんな顔でその告白を聞くのだろう。

大人ほど、自由な心があっていいんだ。

最後の「大人ほど、自由な心があっていいんだ。」の突き刺し方よ!!!

実らなかった恋にも、ちゃんと実ができている。

とどめのラスト1行。

これは恋する人間を救う言葉だと思いました。

マジで何歳になっても、相手が誰であっても恋をしていい。

そんなメッセージが色濃くつまっていたエピソードのように思いました。チヒロと美濃田くんの話が一番好きです。

そんなチヒロが選んだのは、若い美濃田くんに合わせてカジュアルにしたいと思い、店員さんが履いてたデニム。ペイントしてあるのを希望したけど、実はペイントは店員さんが施したもの。下はイメージ。


 

他のエピソードも秀逸です。

手塩にかけて育てた後輩のフィアンセが元カレというシチュエーションとかね…。普通に考えると「オオフ…(絶望)」となるシチュですね、ハイ。

でも、後輩を精一杯祝福する気概に満ちて一皮むける姿はバリかっこよかった(ドレスコードは、花嫁未満の、わき役以上で。)。

最後のエピ。芸術家の彼にふさわしい女になるべく、ザ・平凡女子マサ子の個性を持とうとして躍起になる姿もすごく共感できた。正統派って褒め言葉じゃないの、よくわかるわぁ(好きは、片思い。似合うは、両思い。)。

読んでよかった理由

恋は、いつ、誰としてもいい。

そんなことを読み終わって強く感じました。

昔、新卒で入った職場で色々良くしてくれた先輩(既婚♂当時30代)がいて、「結婚してからも出会って恋をして、その人のことめっちゃ好きになることがあるんだよ」って話してくれたことがありました。(誤解ないようにいうとその人と私は恋愛関係にはなってないです)

そのときは全然理解できなかったけど、私も30代になってようやくわかったような気がします。

不倫や浮気などの行為は責任が伴います。それは大人として頭に入れなければいけません。

だけど、心は自由なんです。自分の心までは誰にも侵されることはないのです。

ふはw恋したいwww(切実)

おわりに

服を買いたくなる本でもあるのですが、そのエピソードどころじゃなく完全に恋(美濃田的な意味で)の紹介ばかりでスミマセン。反省してま~す(してない)。

そして実をいうと、結末はすべての話で書かれてないです。

恋で大事なのは結果じゃなく、経過。

すべての恋に、ありがとう、と言いたい。

 

それではっ!