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「ケーキの切れない非行少年たち」【書評/感想】

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こんにちは、りりーです。

 

ここ1~2年ほど気になっていた新書、

「ケーキの切れない非行少年たち」/宮口幸治

やっぱり買って読みました。

 

なんでそんなに迷っていたかというと、

当時の仕事にめちゃめちゃ関係ありすぎて

あまり読みたくなかったんですよね・・・(笑)。

 

そのときは本当に辞めたくて辞めたくて陰鬱な毎日を過ごしていたから、

休んでいる間も仕事のこと思い出しそうな気がしてなおさら(笑)。

 

ようやく別の仕事について、

気持ちを切り替えることができたので着手できました。

 

結論から言うと、

 

ああ、やっぱりな。

 

という感じです。

 

 

だからこそ、

人との接し方をあれこれ考えていかないといけなんですけどね。

 

「ケーキの切れない非行少年たち」を簡単にまとめてみた

本書を簡単にまとめるとこんな感じ

著者

宮口幸治

立命館大学産業社会学部教授。

京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。

自動精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務。2016年より現職。

困っている子どもたちの支援を行う「コグトレ研究会」を主催。

医学博士、臨床心理士。

(本のカバーより抜粋)

 

実は精神科医でも、子どもを専門とする児童精神科医もいます。

子どもを精神科に連れて行っても、

オトナはみれるけど子どもはみれない。とDrから言われることもしばしばあります。

児童精神科医は正直、レアで貴重な存在です。

 

あと、私個人の印象ですが、臨床心理士の資格まで持っているのはかなり本腰入れている感があります。

さくっと全体像

  • 文の口調:筆者が説明している感じ(めちゃわかりやすい)
  • 明るさ:★★
  • 読みやすさ:★★★★
  • ページ数:182ページ
  • 本を一言で表すと:軽度知的障害、境界域の人の生きづらさをフォーカス

自分も子どもの発達や、精神保健に携わる仕事をしてきたから専門用語に慣れているけど、

よく考えたら全然関係のない人は難しいと思う部分があるかもしれない。

内容

少年院で数多くの非行少年と接する児童精神科医の筆者。

「取り返しがつかないことをしてしまった」と反省の声を期待するが、

現状は反省以前の問題であることが多かった。

 

反省以前の問題とは?

 

図形を模写する課題を出したところ、思わぬ答えが返ってきた。

 

本書20ページより

 

ちょこっとは特徴をとらえているような、、、

しかし全然別の形を少年は描いたのである。

 

この検査は、認知症患者に使用したり、

子どもの視覚認知の力(目で見てこれは○○であると認識する力)や、

写す際の計画力などをみたりします。

 

少年は投げやりになることなく、一生懸命取り組んだ結果の図形です。

 

つまり、どういうことがいえるか。

 

筆者は、この図を描いているのが何人にも怪我を負わせるような凶悪犯罪を行ってきた少年であることを踏まえ、

”世の中こと全てが歪んで見えている可能性がある”

と仮定し、その理由が

そして見る力がこれだけ弱いとおそらく聞く力もかなり弱くて、我々大人の言うことが殆ど聞き取れないか、聞き取れても歪んで聞こえている可能性があるのです。

これが彼の非行する原因になっているのではないかと筆者は思うわけです。

 

著者は非行少年に共通する特徴を6つ挙げています。

  • 認知機能の弱さ
  • 感情統制の弱さ
  • 融通の効かなさ
  • 不適切な自己評価
  • 対人スキルの乏しさ
  • 身体的不器用さ

 

そして、これらは顕著であれば支援に結びつきやすいのですが、

残念ながら学校や家庭で気づかれにくいのです。

 

そういった子どもたちを支援する際、

よく支援計画で出てくるのは「褒める」「話を聴く」

一見、相手に自信をつけてもらうもので耳障りがよく聞こえますが、

著者はそれだけで問題は解決しないとはっきり述べています。

 

大事なのは彼ら自ら気づきのスイッチを入れること。

自分が変わるための動機づけには、自分に注意を向け、見つめ直すことが必要です。

平生から大人たちが正しい規範を見せることは言うまでもなく重要。

それだけでなく、子どもたちと教え合ったり日々のトレーニングであったり、

スイッチを押せるきっかけとなる機会をなるべく与えてあげることが大事なのです。

 

そして著者は「1日5分で日本が変わる」と訴え、

コグトレといわれる、

認知機能の向上を図るトレーニングを積み重ねることを主張しています。

 

参考

「線つなぎ」とか、「最初とポン」など遊びながらで楽しそうである。

感想

個人的に心が軽くなったのは、

「褒める」「話を聴く」だけで問題は解決しないと言ってくれたこと。

 

かつて私も支援をする立場にいたわけですが、

 

これ以上どう話を聴けばいいってんだよぉぉーーーーーーーー!!!!!(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

 

という気持ちになったことはよーーーくありました(笑)。

 

支援を進めるにあたって、

関係者会議という名の泥沼戦争に足を突っ込むこともしばしばありましたw

(下手すると「お前の支援が悪い」という吊し上げになります)

(もちろんそんな低レベル会議だけではないですよ)

 

そのときのお決まり文句、

「もっと○○くんの話を聴こうと思います」

 

スッと入るときもあれば、

あれれ?なんだか違和感~

というときもありました。

 

実際、聴くだけじゃダメなんですよね。

 

なんのために話を聴くかというと、自信をつけてもらうため。

でも、自己評価が高すぎて現状とそぐわない人もいる。

 

そんなときに話を聴くだけでいいのか?ってなります。

 

その点、この本ではトレーニングの意義も語って、

きちんと、問題の解決にフォーカスをあててくれている。

 

話を聴くこと。日々のトレーニングを積み重ねること。

両輪で支援は成り立つのだと思いました。

おススメ度:☆☆☆

保健福祉関係者は☆☆☆☆☆。

気づきがあると同時に、心が軽くなります

 

臨床心理系の専門用語が出てくるので、

専門でない人にはもしかしたら読みづらい部分もあるかもしれません。

 

ただ、ケーキが切れない非行少年たちの現状を伝えるには十分かと思います。

読むと少しだけやさしい気持ちになろうと思えます

まとめ

  • 彼らが見る世界は歪んで見えているかも
  • 自己肯定感を上げる目標だけでは解決しない
  • 気づきのスイッチを入れる機会をなるべく設ける

 

彼らは犯罪をしたくてやっているわけじゃないけど、

ただその先の事が想像できなかったりします。

反省は、ある程度の想像力がないとできません。

 

ここまで読んでくれてありがとうございました!

それではっ