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チャイコフスキー・コンクール―ピアニストが聴く現代 【感想文】

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図書館で借りた本を読み終わり、せっかくなので感想を簡単に書いてみました。

チャイコフスキーコンクール。ソ連時代。

ひと昔前の本は、やはり面白い。


簡単な評価

読んでよかったか(主観)

単純に面白かったです!

ピアノは全くのド素人といったら嘘になるけど音大で専門的に学んできた人間でもないので、最初は内容についていけるか不安でした。

出てくるピアニストも有名人ばかり。そして著者の中村紘子さんが丁寧に解説してくれるからどんな功績を挙げたかもわかりやすかったです。

それと、ソ連の情勢と審査員の人間味にフォーカスをあてていることが多いので、知識がなくても十分楽しめた感じでした。

ボリューム(多い・ふつう・少ない)

→ふつう

文庫本だけど決して薄っぺらくはないです。

かといって長編大作でもないので「ふつう」くらいです。

内容の難しさ(むずかしい・ふつう・やさしい)

→ふつう

とはいえ、音楽の内容なので決してやさしくはないかも。

部分的にはむずかしく感じます、私も。

悩みましたが、読了できたので「ふつう」です。

筆者紹介(簡単に)

中村紘子(1944-2016)

ショパン・コンクールで4位に入賞している。

日本を代表するピアニスト。

ピアノをやっている人なら知らない人いない。ていうくらいすごい人。

あらすじ

チャイコフスキー・コンクール。ソ連(当時)で開催される、国際3大コンクールのひとつ。

審査員の目線で、コンクールの状況が描かれる。

どうやら、演奏は結構ひどいものもあるらしい。折り紙を折りだす審査員もいる。

著者は思いを馳せ始める。自身がショパン・コンクールを受けたときのこと、日本人の演奏を聴いたときのこと、ソ連の某市響とリサイタルをしたけど日比谷高校オーケストラの方がマシだったこと等…。

彗星のごとく劇的な演奏をするピアニストというのは、なかなか現れない。話題に上がったピアニストが登場すると審査員も期待に胸が高鳴る。しかし、今回のコンクールもうまく演奏できるとは限らない。冷めてしまうこともあるのだ。

1970~1980年代。まだ西ドイツと東ドイツに分かれていた頃。世界は今より貧しかった。ソ連だけでなく、ポーランドなどの生活状況も映し出される。ペレストロイカ時のモスクワの状況も。国が危機的状況でもコンクールはあった。日本では考えられない状況ではあるけど。

そして最終審査。「1位は2人がいい」という案が多数なのはいいが、AとB、AとC、AとD…というようになぜ審査員ごとに組み合わせが異なるのか。自分の門下生を推す審査員もいる。それならAでいいじゃないかと正論がとぶ。

審査員も人間なのだ。

印象に残ったシーン(エピソード)

審査中はトランシーバーを使う

「やっぱり、ソ連製のトランシーバーはダメだなぁ」

「東京でやったときはソニー製だったからうまくいったのかもしれない」

出場者だけでなく審査員も沢山いて、会場も広いのかトランシーバーを使うことに。

国際ジョークのようなユーモアあふれるやり取りに思わずクスッとなりました。

ペレストロイカ中のコンクール

ソ連側が出場者・審査員などの関係者用のホテルを400名おさえたのに、実際は200名分しか用意されてなかった。

信じられないことに、予約されているにもかかわらずホテル側がドル払いしてくれる客を優先したからです。おそロシア…。

というかペレストロイカって名前として聞いたことはありますが、実際どんなことが行われていたかは知りませんでした。

ペレストロイカとは

1980年代後半からソビエト連邦でゴルバチョフによってグラスノスチと共に1991年の守旧派によるクーデター発生までに進められた政治体制の改革。

(Wikipediaより引用)

全く想像がつきませんが、日本で言うクーデターは「二・二六事件」です。つまりクーデターが発生するほど混沌とした情勢だったということです。おそろしあ。

読んでよかった理由

20世紀戦後の状況が細かに書かれていて、今となっては信じられない女性蔑視や人種差別がまかり通っていました。音楽界でも。某世界的有名指揮者の「東洋人と女にはピアノは弾けない」発言にはびっくりでした。笑

それがさも当たり前な感じで淡々と書かれるから、時代の流れを感じました。良い意味で。

あとは「音楽的」「音楽性」。この言葉の意味をすごく考えさせられました。今も現在進行系です。ピアノをプロではないにしても弾いている身としては課題になりました。

おわりに

コンクール、しかも審査員の舞台裏、人間味あって面白いですよ!

あとこれノンフィクションなので歴史的に価値あると考えてます。


それでは!