話のあらすじ
とある兄弟の父が殺された。名を河津三郎、妻と10歳にも満たない子供らを残しての突然この世を去った。父の死を受け入れざるを得ない状況の下、殺した者が判明する。その名を兄弟は忘れたことがなかった。――工藤祐経。父を殺した犯人。幼い子供の兄弟、兄の一萬(曽我十郎祐成)、弟の箱王(曽我五郎時宗)は父の仇を討とうと決意したのだった。
そうして建久4年(1193年)5月28日、曽我事件が勃発する。
作者紹介
著者 坂口螢火(さかぐち けいか)
東京都大田区出身。駒澤大学歴史学科卒業。
主な著書に『忠臣蔵より熱を込めて』(つむぎ書房)がある。
坂口螢火さんのブログ→刀らぶログ
参考HP:時代小説SHOW
ムム……。
新選組の第二章は土方の話にしようと思っていたのに……。結局、清川八郎で書いてしまい、三章は人斬り新兵衛の話を書いてる!(人斬り新兵衛ご存知ですか?人斬り以蔵の友達!)なかなか進まない!ぶっちゃけヤバいです……。幕末が面白すぎるから悪いんですよ~(>_<)
— 坂口螢火 (@merucurius1) March 29, 2023
私自身、○○オタクを見極める嗅覚は鈍い方だと思いますが、きっと誰が見ても歴史好き(=歴史オタク)なんだろうなと思います。ていうか熱量がヤバい。
『曽我兄弟より熱を込めて』は面白いの?
結論:歴史オタクじゃなくても面白い
面白かった度
鎌倉の話よく知らんし!鎌倉殿も観てなかったし!歴史に関しては小学生と同等かそれ以下の知識だし!
なのになぜ話に引き込まれるのか。
固く決意した兄弟に妨害が入り、また思わぬ助け舟と人情がそこにあり、まるで映画を観ているかのようなストーリーでした。
仇討ちをするまで決意が揺るがない並々ならぬ精神力に感銘を受けました。
また、私自身、鎌倉時代の知識が
- イイクニ(1192)つくろう鎌倉幕府(ちなみに1985年説が浮上している…)
- 将軍は源頼朝(なお以降)
- 次は室町幕府だけどたしか1333年だっけ?(建武の新政すら言えてない)
と、小学生に余裕で負けるレベルです(これ結構恥ずかしい)。
それでも、一気に最後まで読めてしまうほどの内容でした。
理由は
- 鎌倉時代の当時の状況説明も簡潔に入っている
→「そうだったのか!」となる - ボスを倒しに行くという明快なストーリー!
→ゲーム脳のゆとりでもわかる - 当時の生活に関するコラムがはさまっている
→暮らしなどがイメージしやすい - そもそも古文特有の難しい言葉がほぼない
→ありがたき幸せ!!!
といったことが挙げられます。
この本はこんな人にオススメ
- 日本の歴史に興味がない人
- マニアックな歴史を知っておきたい人
- 『鎌倉殿の13人』を観てない人
- とりあえず日本三大〇〇はおさえておきたい人
- フィクションに飽きた人
- いろいろと心当たりがある人
本のステータス
あくまでも主観ですが、本のざっくりした雰囲気です。
むずかしさ | 歴史の専門用語ほぼ無し ただし初めて知る内容は多いかも |
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ボリューム | セリフが多いので読み進めやすい |
ハッピーエンド度 | 仇討ちですので… |
読後感 | 意外と終わりはすがすがしい |
大河ドラマのナレーターのような語り口調が心に優しいです。一歩引いたところに立って物語を眺めている感じなので、あまり心が重たくなりません。
あと、仇討ちなので刀を振るシーンはありますが不必要にグロテスクな表現がないのも好感ポイントです。
見どころ読みどころ
兄弟なかよし
兄が冷静沈着タイプで、弟が頑固で豪傑なタイプ。しかも弟、兄の言う事なら素直に聞いちゃう子。なにこれかわいいか。
というか、今気づきましたが最後まで読んだのに1回も兄弟ゲンカがありませんでした。
※余談 兄弟愛について
『光圀伝』(冲方丁)に出てくる徳川光圀とその兄である松平頼重の絆も固くて好感がもてますが、それでもピリピリするシーンはあるし光圀は当初兄にめっちゃ反抗的でした。
源頼朝と義経の仲(たしか悪かったはず)を考えると、戦国の世でも互いを思いやる兄弟愛が成り立っていたことに少しホッとします。
畠山重忠ほか武将たちがナイス過ぎる
これは完全に地元バイアスがかかってすが、畠山重忠がここまで情にアツい人間だったことに元埼玉県民としては非常に誇りに思いました。
曽我兄弟の事情を察し、表立たずそれとなく助け舟を出す。もちろん、畠山重忠だけでなく他の武将も察知して助けています。
正直に言うと畠山重忠というネームは知っていたが実際の功績はよく分からず、という無学の人間だったので、この本を呼んで「重忠カッケー!」と思いました(爆)。
ラスボス工藤祐経の煽りスキル
兄も弟も、サシでラスボス祐経と対峙するシーンがそれぞれあるんですよね。
その際に祐経が「おまいら優遇してやるぞ、ならば(以下ネタバレにつき隠します)
俺と盃を交わせ(任侠の漫画読んでて出てくるアレと同義)」
っていうまーーーーーーーーーーーーーーーピンポイントで兄弟の逆鱗に触れる煽り!!!!見習いたい!!!!!!!
この余裕がいい感じです。というか、隣人(敵)に親切にしろとはよく言ったものだなあと思います(絶対意味が違う)。
実はラスボス以上に手強い相手がいる
ネタバレになるのでクリックしてください。
母親強すぎでしょう!!!笑
心情を考えると、現代の日本に暮らすママ100人に聞いて100人が母親の意見に賛同するんじゃないかな。「なに考えてんのあんたたち!!」って絶対なる!笑
ことごとく妨害がキマっています。オタク発言をするとTOD2のバルバドスみたいにしつこい。その後母親がしっかりと折れるので仇討ちが見事成就しているのですがね。それまでの経緯があるのでラストはグッときますよね。
まとめと最後に一言
- 知識がなくても読めてしまう歴史本
- 胸がアツくなる展開
- 兄弟の絆が深すぎて感動してしまう
- 読み終わる頃には曽我兄弟について語れてしまう
- つまり歴史の沼へゲフンゲフン
歴史は好きですが鎌倉時代はノーマークに近かったんですよ(言い訳)。それでもここまで面白く読めてしまい、自分でも驚いています。
最近読む本が偏っている、もしくは歴史本を偏愛したい。
そう思っていたらぜひ手にとってみてください。
きっと学校で教えてくれない歴史に目覚めちゃうかもしれません。
謝辞
このたび、著者の坂口螢火様より『曽我兄弟より熱を込めて』をご恵贈いただきました。
物語のお話はもちろん、曽我兄弟への熱意の結晶ともいえるこの作品に、ただただ脱帽するばかりです。
そしてこのような機会を与えてくださり、誠に感謝申し上げます。